泣く子

 スーパーへ買い物に行きました。今日はポイント5倍の日らしくてレジは大行列。うわ〜と思いながら並びました。並んでからも、どんどん後ろに行列が出来ています。
 突然、赤ん坊の鳴き声がしました。大きな声です。それもそのはず。私の後ろで泣いていました。ベビーカーの中で泣いております。母親は側にいますが、どこかのお母さんと談笑中です。まぁ私にはどうしようも出来ません。普通にレジの順番を待っていました。すると、私の前に並んでいる50くらいのおばちゃん、赤ちゃんの方を向いてニコ〜。また振り向いて、ニコニコ〜。何度も赤ちゃんに笑顔を送っております。
 あの〜、私、あなたの笑顔見たくないのですが。
 赤ちゃんも同意見だったらしく、より激しく泣きだしました。するとそのおばちゃん、プライドに火がついたのでしょう。何としてでも泣きやまそうと頑張り出しました。口をとんがらせ、変な顔を作りました(もとから変でしたが)。そして突然、赤ん坊に「プピプピプピ〜。むにょむにょむにょ〜」と訳の分からない言葉を発したのです。
 異様です。ものすごい異様です。スーパーのレジでむにょむにょ言っているおばちゃん。赤ん坊をあやす域を超えています。隣のレジへ移りたいです。
 もちろんそんな生物を見て赤ん坊が泣きやむはずがありません。
 ウェェェェーーーン、ウェェェェーーーン。


 …まったく。とうとう私の出番が来てしまったようです。好青年といえば海人。海人といえば好青年。そんな私。一発で泣きやませて見せますよ。
 さっきのおばちゃんはレジの順番が来たようで、悔しそうに前へ進んで行きました。赤ん坊の母親もまだ談笑中。今だ。チャンス。
 私はそっと後ろを向きました。さっきより泣く声が小さくなっています(たぶんおばちゃんがどっか行ったから)。もう少しだ! あと一歩で泣きやませられる! 私は思いっきり爽やかな笑顔を赤ん坊に送りました。
 ニコッ(キラーン)。


 ビィェェェーーーン! ビィェェェーーーン!


 あ、レジの順番が来たようです。