一文字で

 今日の「はやく起きた朝は…」で、磯野貴理がこんな話をしていた。
「後ろから来た自転車にベルを鳴らされた時、こちらの反応の違いで、謝る立場が逆になる」
 今まで自転車は軽車両扱いで、車道を走らなければならなかった。しかし最近法律が変わり、場合によっては歩道を走っても良いということになった。すると今度は歩行者が危なくなる。
 チリンチリン!
「あっ!」
 後ろから来た自転車にベルを鳴らされ、ビックリして退く。
「すみません」
 思わず謝ると、向こうは邪魔なんだよと言うような顔で去っていく。こちら(歩行者)が交通弱者なのに、何故謝らなければならないのだ。腹立たしい。そんな問題を、磯野貴理がうまく解決したのだ。
 チリンチリン!
「あっ!」
 この「あっ」を、「おっ」に変えるだけで良い。
 チリンチリン!
「おっ!」
 するとほぼ間違いなく自転車の方が「すみません」と謝ると言う。一文字変えるだけで謝る立場が逆になるのだ。


 前に「サラリーマンNEO」でもやっていた。取引先のミスで仕事を失敗した時のこと。上司に報告し、謝らなければならない。
「すみません。私に責任があります」
 これは一見、全ての責任をかぶり潔い感じに見える。しかしこれでは上司に、「そうだ、全てお前の責任だ!」と怒られるだけで、良い謝り方ではない。ここで一文字足してみよう。
「すみません。私に責任があります」
 どうだろう。一文字入れただけで、「いやいや、キミが悪いんじゃない。全て向こうの責任だ」と怒りの矛先が取引先に変わってしまうはずである。


 日本語は面白い。一文字だけでこんなにも結果が変わってしまうなんて。そしてふと、「学級文庫」と言うとテンションが上がる友人のことを思い出した。べんきだろうか。いや、げんきだろうか。