そう来ましたか

 ほぼ毎日必ずかかってきます、勧誘の電話。
 もういい加減うんざりです。
「海人(仮名)さんはいらっしゃいますか?」
 そういう電話の時は大体、「今いません」「出掛けています」「死にました」などと答えます。
 しかし今日の電話はひと味違っていました。


 プルルルル プルルルル ガチャッ
「はい、もしもし」
「木元さんのお宅でしょうか?」
「はい、そうです」
「あのー、奥様ですか?


 ……。
 これは新しい切り出し方です。ちょっと怯(ひる)んでしまいました。
 男らしい私の声を、女性と勘違い? いやいや、これは罠です。そうですか。そう来ましたか。心理作戦なんですね。ここで「違う」と答えるともう最後。あれよあれよという間に壺を買わされることになるんです。ここは「そうだ」と答えねば…。
 しかし奥様で押し通す勇気はなかったので、普通に「違う」と答えました。
 すると、
「あっ! 申し訳ございません!」


 …普通に間違われていたようです。ショックでした。
 新聞配達していた時に、客が私のことを中国人だと思っていた事ぐらいにショックでした…。
 アタシ、男アルよ〜。日本人アルよ〜。気を付けるヨロシ。