交渉人 海人

 早くもプリンターが壊れました。まだ1年ちょっと。
 こいつは買った当時から主人を困らせていました。


 買ってその日に印刷してみたんです。とりあえず5枚ほど。刷っていると、3枚あたりから紙がズレだして、斜めに印刷されるようになりました。何コレ? 当然、私は電気屋へ行きました。
「今日買ったんですが、いきなり不具合が出ましたよ。取り替えて頂けますか?」
 すると店員、
「そうですか。まずはどう不具合が出ているのかを見させて頂きます」
 そう言ってプリンターをセットし、印刷し始めました。
「……。正常に動いているようですが…」
「…………」
 何で直るんや!
 すごすごと帰りましたよ。その忌々(いまいま)しいプリンターを抱えてね。


 そんな曰く付きのプリンター。今日で天国行きです。原因は、黒のインクの出がおかしいから。
 プリンターにはノズルチェックという目詰まりを確認できる機能があります。A4の紙にそれぞれの色を表示させるのですが、黒だけおかしいのです。かすれたり、ずれてたり。クリーニングしても直りません。エプソンに聞いて対処したのですが、やっぱり直りません。そしてついに出ましたこの言葉。「修理に出して頂くしか…」。
 ノォー!
 すぐに使いたいんです。年賀状をたくさん刷らなければならないんです。


 というかプリンターよ。壊れるなら派手に壊れろ! 何だ、黒の出がおかしいって! 中途半端! 煙ぐらいを出してみろって。
 もういいです。こんなプリンター。お払い箱です。電気屋に持って行ったら、修理に9千円ぐらいかかると言われましたから。それなら新しいのが良いです。
 そして思い切ってA3のプリンターを買うことに決めました。仕事で使うので。29,900円ナリ。これでも安い方です。
 そして私、キャラじゃないですが思い切って値切ってみました。初挑戦。
「あのー、このA3のプリンターを買うので、インクを1セット付けてもらえないでしょうか…?」
 恐る恐るという感じです。かなり腰低いです。しかし店員。
「あ〜、それはちょっと無理です…」
「そうですか…」
 交渉終了。絶対にネゴシエーターは無理だと悟りました。
「在庫を持ってくるので少々お待ち下さい」
 そう言われ待っていると、先程とは違う店員が在庫を持ってやってきました。ちょっと偉い感じの店員です。
「今回はこちらをお買い上げと言うことで…」
「あ、はいそうです」
「ありがとうございます。それでしたら、お値段の方をもう少し下げさせて頂きます」
「え?」
 これは意外です。向こうから言ってきました。ラッキー。
「29,900円ですから…、えー、27,800円で…いかがでしょうか…?」
 私は28,000円ぐらいになれば良いな〜と思っていたんです。それよりも200円多く下げてくれていました。これはお得。しかし! そのとき私、何故かボ〜ッとしていたんです。何も考えていなくて、上の空で店員の話を聞いていました。
 すると店員、私が何も言わないのを見て、「お客さんは、まだその値段じゃ不満だと思ってらっしゃる」と勘違いしたようです。慌てて「あ、あ、えーとですね、3千円まででしたら最終的に下げられるんです…」とぶっちゃけちゃったのです。
 この人もネゴシエーター無理だね…。 
 3千円まけてもらいました。やったー。それと普通紙(250枚入り)までオマケで頂きました。いぇーい。


 新プリンターくん、よろしくね。大事に使うよ。だから長く生きてちょうだいね。