富士レポート2006(3)
「蒼いかも解らない程下のまた下で」 レポート3
ここから疲労が最高潮に。もう何も考えられません。
杖があって本当に良かったです。砂漠の旅人のようでした。杖で支えて何とか体を前へ引きずります。ぐは〜。まだ着かねぇ〜。
ここまで登ると皆同じ状態でしたね。どんな人でも疲れるんですよ。だって、人間だもの。
今回外国の人が多かった気がしました。ツアーっぽい団体さんもいましたし、家族で登っている人達もいました。体格の良いムキムキ外国人がヘバっていて、それが妙に面白かったです。
私が休憩していると、外国人女性2人が登ってきました。目の前を通り過ぎようとしたその時、一人が砂に足を取られて転んでしまいました!
ズサァ−!
「アウチ!」
…と言ったかどうか分かりませんが、短い悲鳴を上げ倒れこみました。
緊急事態です! この状況を見て私は!
無反応……。
え〜〜〜〜〜!?
理由は色々ありますが、最大の理由が「NOVAに通っていなかったから…」。
無念でなりません。英語が喋れたら!
いや、まぁ大した転び方じゃなかったんですよ。軽くすべった感じで。なので放置プレー。※もちろん怪我していたら駆け寄りますよ。
その女性はすぐに起き上がって、連れにブツブツ言っていました。
登山は己との戦い。頑張れ金髪姉ちゃん。
数分後、後ろから登ってくる人を見て私は驚いてしまいました。小学生が登っているんです。こんなに高い所まで。
親子で来ていた3人組。父ちゃんに男の子2人。あまりに小さい子だったので、その父ちゃんに聞いてみました。
「お子さんはおいくつなんですか?」
するとその父ちゃん。
「小学1年生と小学5年生です」
何才か と聞いとるんじゃい!
でも小学1年生ですか。スゴすぎです。
まぁかなりぐずっていましたが。
「帰りたいよ〜。もう歩きたくないよ〜。頂上なんてどうでも良いよ〜」
う〜む、私の心境と全く同じ。
すかさず父ちゃんの喝が入ります。
「歩くんだ! 頂上に着いたらいくらでも休ませてやる!」
かなりのスパルタです。
小学1年生ですよ。山登りなんか楽しくないですよ。体力もまだ無いですし。ここに来ただけでもかなりの健闘だと思いますよ。
「嫌だ〜。もう帰る〜」
私も一緒になって言いそうになりました。すると父ちゃんの一言。
「歩かなきゃ置いていくぞ」
…あんた、デパートでぐずっている子供じゃないんですから。ここでの「置いていく」は”死”を意味しますからっ!
みん氏はその子に「頑張れ」と激励をしていました。いやいや、その前にウチらが頑張らんと…。
まだ見えぬ9合目。確か6合目の立て札に、8合5勺から30分と書いてあったはず…。しかしもう1時間は歩いています。
帰りたいよ〜。もう歩きたくないよ〜。9合目なんてどうでも良いよ〜。
ウダウダと歩いていると、ようやく鳥居らしき物を発見! ここか!? と思ったらフェイントでした。まだ少しありました。
しかし! ついに! ついに、9合目に到着!! やった……、ん……? ……え? えぇっ!?
私の目に、信じ難い文字が飛び込んできました。
「富士山頂上浅間大社典宮」
大きな細長い石に、しっかりと彫り込まれています。
……頂上? ここ頂上? ちょちょちょちょ頂上??
みん氏はまだ遅れていて到着しておりません。私は慌てて後ろから来た人に聞きました。
「あの! ここ、頂上なんですか?」
「えっ? あっ! ホントだ! 頂上って書いてある!」
その人もビックリしていたようです。
そりゃそうですよ。9合目はどこへ行ったのですか?
みん氏の姿が見えたので叫びました。
「おい、早く来な! ここ頂上だってよ!」
「はぁ?」
冗談は休み休み言えという感じの返事が返ってきました。いやいや、本当なんだってば!
そしてみん氏も無事到着。文字を見てようやく本当のことだと信じたようです。
証拠にパシャリ(※写っているのはみん氏)。
お土産屋さんでは、頂上でしか買えない商品がたくさん置いてありました。ちゃんと日付けまで入れてくれます。
そうそう、焼印も全部揃いました。
「5合目」「6合目」「本6合目」「8合目」「本8合目」「8.5合目」「富士頂上」
2年連続行けなかった友人に、お土産用の短い杖を買ってあげました。「富士頂上」の焼印入りです。※すごく不評でしたが(狙い通り!)。
それにしても9合目はどこへ行ったのか? お店の人に聞いてみると、9合目は無くなったのだと教えてくれました。そういえば途中屋根しか見えないで埋まっている小屋を見たような…。もしかしてあそこが9合目? いえ、どこが9合目でも良いです。とにかく嬉しい誤算! 9合目だと思ったら頂上だったのですから。やりましたよ。わっはっはっは。
では下界を見下ろして言ってやりましょうかね。あの名セリフ、「フハハハハハ、人がゴミのようだ!」を。
……。雲で下界が見えねぇ……。
「目がぁー! 目がぁー!」
山頂マップ。
誰かが「頂上に登ったら人生観が変わるよ」みたいなことを言っていましたが、登ってみて、特に私は何も感じませんでした。
まぁ嬉しかったのは事実です。でもそれだけでしたね。たかが日本一の山。それを日本一の海人が登ったというだけです。
みん氏も同じような感想でした。
まぁ本当に嬉しかった。それだけは言っておきます。そしてもう二度と登らない。これもしっかりと言っておきます。
あとは下山だけ。かなり遅くなってしまいました。現在16:10。急がないと真っ暗になってしまいます。
この時間になって、霧がかなり濃くなってきました。寒いし疲れたし見えないしで、かなり大変でした。そして去年は下山中に転んでしまいましたから、今年は何とか無傷で!
頂上まで登れたことが、かなり精神的に助けとなりました。「9合目で断念」だったらかなりヘバっていたと思います。
頑張りました。最後の方はもう真っ暗になってしまいましたが、ようやく、本当にようやく、地上に到着(19:30)。平らな道が快・感!
結局、5:30から19:30まで。計14時間歩いたことになります。ぐはー。
え? 来年も登る? 無いです。もう無い。
2年連続で行けなかった友人はどうするかって? 朗報です。その友人、「2回もタイミング逃しちゃって何か興味が薄れちゃった」だそうです。よく言った! あめちゃんあげよう。
ということで、これで富士レポート・完です! 二度とありません。行きたければ勝手に行って下さい。私は終わり。富士山は制しました。
「別のルートから行ってみれば?」とか言う人にはゲンコツです。
自分、よくやった。
これからは「富士山は見るモノ」精神で行きたいと思います。
富士レポート・完