無理

・日にちを間違えていました。
・道に迷ってて行けません。
・いえ、ボク、双子の兄です。
・熱がありまして。
・宗教上の理由でちょっと……。
・口が臭いので……。


 明日ついに挨拶をする日だ。その部分だけ手違いで抜けたりしてくれないだろうか。胃がキュルキュルする。
 今日はお通夜だった。弟は何とか平凡に挨拶を終えた。羨ましい。坊さんに「明日、お兄ちゃん頼むよ」などとニヤけ顔で言われ、気分はどん底にまで下がっている。そんな気分に追い打ちをかけるかのように、叔母さん(父の姉)が言った。
「おばあちゃんはお餅と柿とカリントウが好きだったわよね〜。お棺の中に入れたいわね。そうだ! イラストを描いて入れれば良いんだわ! ねぇ、海人ちゃん、お願いできる?」
 はぁーーー!? この叔母さん、何を言い出すのだ。もう一度考え直せ。実物を入れれば良いじゃないか。何故イラストなんだ。オレは明日の挨拶(をしない言い訳)を考えることで頭がいっぱいなんだぞ! 却下却下!
「ね! 描いてね!」
………はい
 私、何か悪いことをしただろうか。うぅ。今から号泣し、その涙で溺れていてお葬式に行けませんでした、という言い訳にするか。今ならいくらでも泣けそうな気がする。