使命

 昨日はお坊さんが、枕経なるものをしてくださった。祖母の体にお経を吹込む。それが終了すると、お坊さんは祖母の顔を眺めながらこう仰った。
「おばあちゃん、成仏ですね。一目見て分かりました」
「はぁ、そうですか」
「何故分かるのかと申しますと、お経に書いてあるからです
 その途端、父がブフォッと吹き出した。こらっ。
 お経には、体が白く、顔が柔和で、(あともう一つが何だったか忘れた)であると、成仏なのだそうだ。祖母はまさにその状態で、とても幸せな亡くなり方をしているのだそうだ。


 そのお坊さん、それで終われば良いものを、突然とんでもないことを言い出した。
「おばあちゃんにとって一番の喜びはお孫さんです。お二人(私と弟)に、お通夜とお葬式の時一人ずつ、挨拶をしてもらいましょう
 はぁーーー!!!? この坊さん、何を言い出すのだ。もう一度考え直せ。”じいさんばあさんは全員、孫を可愛いと思う”というのは間違っているぞ。私はそんなに可愛がってもらった記憶は無い。それよりも実の息子達の方がたくさん喋りたいことがあるだろう(5人もいるのだ)。生活した年数だって向こうの方が多い。そっちにしてくれー! 頼むー! やだー、大勢の前で喋るなんてー! ノォー!
「良いですね?」
……はい
 お葬式の時、(別の意味で)号泣すると思う。