お好み焼き改造計画2

<昨日のつづき>


 さて、いよいよ父のお好み焼き屋デビューです。
 行くと決めてから、もう父は研究する気満々。「色々と食べてみないとな」等と言っています。良いことです。


 店に入り、早速注文しました。量が少なくてたくさんの種類が選べるセットと、お餅のお好み焼き。
 まず父は、に食い付きました。
「この油は…。う〜む、かなりサラサラしているな。上品な油を使っているんだな。そうかそうか」
 そうかそうかじゃないです。そして父は、店員に何の油を使っているのかを聞くと言いだしました。私と母は「え〜〜〜!?」です。
「お父さん、さすがにそれは教えてくれないわよ」
 ちょっとズレていますが、母、止めに入りました。
「いや、聞く」
 また父の無駄な頑固が出ました…。あぁ、店員を呼んじゃった。よりによって可愛い店員を。あぁ、恥ずかしい…。
「あのー、この油は何の油を使っているんですか?」
「はい?」
 店員、すんごい戸惑っています。そりゃそうです。質問の意図が分かりませんから。「この店の技術、材料、調味料、盗めるモノは全て盗んで、それ以上のお好み焼きを作ってやるぞ。ウハウハ」こんな父の魂胆が知れたらどうなることでしょう。
「しょ、少々お待ち下さい…」
 店員はそう言って奥へ駆けていきました。
 待っている間も父は油を吟味しています。サラサラ具合が全然違うそうです。
 店員が帰ってきました。
「使っている油なのですが…」
「はい」
サラダ油 だそうです」
「え…?」
 父もポカ〜ンですが、私たちもポカ〜ンでした。
「ま、間違いないんですか?」と父。
「はい」と店員。
 シーン。すごい気まずい雰囲気です。店員も「ご期待に添えなくてすいません」みたいな感じになっています。
「お、お父さん、店員さんに焼いてもらおうか。ほら、どういう風に焼くのかさ」
 たまらず私が入りました。
「そ、そうだな。す、すみませんが、お願い出来ますか?」
「は、はい」
 店員が手際良くネタを鉄板に流し込みました。ジューという美味しそうな音。香ばしい香り。可愛い店員。良いです! この店、伸びるよー。
 店員さんはひっくり返すのも慣れています。キレイに仕上がりました。そして私は「ホラ、押しつけていないでしょ?」と父に目で合図。しかし父は全く見ていませんでした。
「焼き上がりましたらお召し上がり下さい」
 そう言って店員さんはどこかへ行ってしまいました。あぁ…、切なす。
 テーブルに目を戻すと、信じられない光景が繰り広げられていました。父が、父が…、てこ(ひっくり返すやつ)でお好み焼きを押しつぶしているのです!
 やめろーーーーー!
 やめてけろ〜…。あぁ〜……。
 …もうイイです。諦めました。つぶしたいだけつぶして下さいな…。そう思っていたら、大丈夫でした。そのお好み焼き、ふっくらのままです。山芋がたくさん入っているせいでしょうか。ふっくら。美味しそう。
「そうか、山芋か…」
 父の目が光っています。はいはい、存分に研究してちょうだい。


 そして、いよいよお餅入りのお好み焼きです。お餅は小さくサイコロくらいの大きさに切られていて、それがたくさん入っています。モチモチとした触感がたまりません。味もマイルドになり、この相乗効果にいつも感動させられるのです。ホラ、食べて食べて。私も食べました。相変わらず、ウマー!
 父も食べました。
「ほぉぉー」
 父がうなりました! いたく気に入った様子です。
「よし、次は餅を入れよう」
 やりました。改造計画成功です。
 父は店を出てからもブツブツと何やらイメージを膨らませていたようです。


 そして今日(正確には昨日)、隣のおじさんおばさんを呼んでのお好み焼きパーティーです。パーティーと言っても普通の夕食ですが。
 一枚焼き上がりました。
 どれどれ…。おぉ、ふんわりです! 相変わらず押しつぶしていましたが、山芋をたくさん入れたらしく、お店のようにふんわり。しかも餅入りです。
 食べてみると、うん、お店のよりは落ちるけど(そりゃそう)、家庭レベルなら美味しい! よくやった父ちゃん。隣のおじさんおばさんも絶賛です(お世辞入り)。


 やっぱり関西人ってお好み焼きとかタコ焼きになると目の色が変わりますね。関西人の血がそうさせるのでしょうかね。人が変わったように熱中します。
 まぁこれからも研究して、美味しいお好み焼きを作って下さいな。