Is He OK?

 私は槇原敬之のファンだ。いや、ファンだった。歌詞も曲も大好きで、アルバムが出ると必ず買っていた。
 ある日、『Cicada』というアルバムが出たので早速購入し、聴いてみた。何か違和感を感じた。歌詞も曲も槇原敬之っぽい。なのに何だろう、この違和感は。ほんの少しなのだが(気のせいかもしれないという程度)、精神的に何か嫌な感覚を覚えた。


 その年の8月、私は夕刊を見て仰天した。
槇原敬之覚せい剤取締法違反で逮捕」
 ファンを裏切り、人間をもやめ、悪魔と取り引きをした槇原敬之。私の胸をえぐる事実がそこには書かれていた。
 供述によれば、麻薬をやっていたのは1年前から。『Cicada』もその時期に含まれていた。


 その後槇原敬之は麻薬を断ち切り、復帰した。
 しかし私にはそんなニュースどうでも良かった。できるなら復帰などして欲しくなかった。芸能人が麻薬をやって復帰できる制度は非常に良くない。人々に誤解を招く。
”麻薬をやっても立ち直れるんだ”
”やめようと思えばやめられるんだ”
 テレビに出て笑顔で活躍する元麻薬芸能人たち。施設に入り、地獄の苦しみを抜けないと断ち切れないという事実は隠されたままだ。
 もうこういう輩はテレビには出てきて欲しくない。


 ある日、聴く気も無かったのだが、何故だかレンタル屋でアルバム『EXPLORER』に手が伸びた。
 聴いてみると、良かった。1曲目の「優しい歌が歌えない」で、ほんの少し(3mm程度)許せる気持ちが生まれた。他の曲も良かった。かつての槇原敬之の優しい歌がつまっていた。


EXPLORER』が良かったと言っても、もうファンではなくなった。そのため情報に疎くなり、新しいアルバムが出ていることを知らなかった。
 昨日レンタル屋で発見。『LIFE IN DOWNTOWN』というアルバムが出ていた。借りてみた。
(…あれ?)
 この違和感。覚えがある。何か違う。心にくる歌が一曲も入っていない。
 …またか?
 すごく嫌な予感がする。気のせいであって欲しい。もうファンではないが、一人間として心配である。


 Is He OK?


 Cicada EXPLORER LIFE IN DOWNTOWN(初回生産限定盤)