もっと想像力を
「もし地震が来たら、このサイドボードから離れた方が良いよ」
私はもしもの時のために、両親にこう言った。このサイドボードというのは、カリモクで買ったバカでかい収納家具のことだ。あまりにもでかいため、倒れてきたら即死だということは容易に分かる。しかし父はこれを否定したのだ。
「これは倒れないから大丈夫だ」
「え? 何で?」
「カリモクの人がそう言ったんだ。『地震があっても倒れません』って」
「いやいやいや、それは地震をなめすぎだよ」
「大丈夫だって。こんな大きいのが倒れるはずないじゃないか」
……想像力の無い人の考えがこんなにヒドいものだとは思わなかった。ニュースで見ただろうに。家が倒れてんだぞ! 家は倒れるのにサイドボードは倒れないってどういう計算だ。それを言ってもまだ納得していなかった。
「倒れる訳が無い!」
父の自信が一番怖い。